日経新聞2016年(平成28年)10月25日(火)の記事より。
かねてより問題視されていた相続税対策スキームにメスが入る時期が明確になりました。
以下記事より。
政府・与党は20階建て以上の高層マンションについて、高層階の固定資産税と相続税を引き上げる。
2018年以降に引き渡す新築物件が対象。
一方で低階層の税負担を軽くする。
高層階の部屋は取引価格が高いわりに税金が安く、富裕層の間では節税策として購入する動きが広がっていました。
なぜ問題になっていたのかというと、
大都市圏などにある「タワーマンション」と呼ばれる超高層物件(20階建て以上)については、上層階に行くほど景観がよくなるため、同じマンションで同じ面積でも、例えば1階とか2階などと比べると、購入価格は高くなります。
一方で、こうした物件の固定資産税や相続税の算定基準となる「固定資産税評価額」は、マンション1棟の評価額を部屋ごとの床面積で割って計算しているため、階層による差はありません。
そのため、同じ面積なら最上階と1階が同じ評価額となり、固定資産税や相続税も同額になってしまいます。
ちなみに記事によると、
資産評価システム研究センターが全国の新築高層マンションの分譲価格を調べたところ、最上階の床面積当たりの単価は最下層階より平均46%高かった、とのこと。
この結果、マンション高層階の部屋を買えば、現金のまま相続するよりも、相続税の金額も抑えやすい。富裕層しか使えない節税策として批判が高まっていた。固定資産税も取引価格の割に安くすむ、というわけです。
実勢価額と、税務上の金額が異なることに着目して、相続対策に有効ということでずいぶんもてはやされてきましたが、
今回の改正で、そのスキームに待ったがかかることになります。
総務省が検討している新しい評価額の仕組みは、
高層マンションの中間の買いは現行制度と同じ評価額にする一方、中間階よりも高層の階では段階的に引き上げ、低層の階では段階的に引き下げる、というもの。
評価額5000万円の建物にかかる固定資産税が単純計算で年70万円。
5500万円になれば固定資産税が年77万円に増える。
なお、今回の税制改正は、2018年以降に引き渡す新築物件に対し適用されます。
既存の物件については、現行の税制が適用されますので、
2017年12月末までに引き渡しが完了すれば、高層マンションの節税スキームは有効です。
来年は、高層マンションの販売がかなり盛んになるかもしれませんね。
節税スキームに乗せられて安易に不要な物件を購入しないよう注意も必要です。
なお20階建て以上の高層マンションは建築規制の緩和により、1999年から関東、東海、関西の三大都市圏で急増。すでに全国で1200棟を超えているとのこと。
関東圏だけでなく、関西圏などでも注意が必要です。
(了)