日経新聞平成27年12月3日(木)トップ記事「法人税 来年度29.97%」より。
自民、公明両党は、企業の利益にかかる法人実効税率について、現在の32.11%から2016年度に29.97%に引き下げる方針を固めた。
実効税率が20%台についに突入することになりそうです。
私が税理士試験の法人税法の勉強をしていた平成12年頃なんていうのは、40%以上でしたから、それに比べると10%以上、下がっていることになります。
この理由として、
日経新聞平成27年11月27日(金)の記事によれば、
引き下げを急ぐのは首相が掲げる国内総生産(GDP)600兆円の実現に向け、企業の協力を得る必要があり、
経済の好循環には、過去最高に膨らんだ企業の内部留保を設備投資や賃上げに回す必要があるから、とのこと。
理屈はわかります。
大企業の税コストを下げて、その分を人件費や設備投資に回す、そうすると大企業に勤める人は給与が増えるから、モノの購買量が増えます。
設備投資が増えれば、製造業やその周辺事業の会社の売り上げが増えますから、そうすると色々と世の中のお金が回るようになる、ということでしょうか。
でも、減税分のすべてが人件費や設備投資に回るわけはないですよね。
回らない分も相当あるはずです。これは結局大企業の内部留保の積み上げになります。
一方、この記事で一番気になるのは、過去最高に膨らんだ企業の内部留保という点。
税収を考えるときは、これだけ必要!っていうのをまず決めて、
そのためにどこからいくら徴収すればいいかという流れで考えると思うのですが、
必要額が減らないのに、入りを減らせば、どこかを増やさないと帳尻が合いません。
今回は、実効税率減税ですから、その穴埋めに何かが増税になるわけですね。
どこかの会社の負担が減れば、どこかの会社の負担が増える、あるいは回り回って個人の負担が増える、きっとそうなるのでしょう。
そういう意味で、「過去最高に膨らんだ企業の内部留保」という言葉を見た後に、実効税率引き下げと言われても、なんか釈然としません。
逆に、過去最低の内部留保、だから減税!だったらわかりますが。
税法には「応益負担」という基幹的な考え方がありますが、これ応益負担になっているのでしょうかね。
国際競争力の強化というのはいいのですが、
中小零細企業で、過去最高の内部留保になっている会社はどれくらいあるのでしょうか。
ピケティではないですが、日本は本当に所得再分配機能が失われていると思いますね。
(了)