日経新聞2016年(平成28年)10月21日(金)より。
海外に移住して5年超であれば相続税の課税がされなかったのに、
そのような場合でも課税されるようになる、という税制改正の話です。
まだ案の段階ですが、長期間の対策が必要で、かつ金額が大きな資産税項目について、このような動きがあるということを知っておくことは非常に重要かと思います。
以下、記事より。
政府・与党は海外資産への相続課税を抜本的に見直す方針だ。
相続人と被相続人が海外に5年超居住している場合、海外資産には相続税がかからないが、課税できるようにする。
税逃れに歯止めをかける狙いだ。
日本で一時的に働く外国人が死亡した場合、海外資産にも日本の相続税をかける現状も変える。
自民税調は2017年度税制改正大綱に盛り込む方向で議論を始める。日本の相続税はなくなった人の資産が一定額以上だと税率がかかる。例えば夫が亡くなり、妻と子2人が相続する場合は土地や現金、有価証券などの資産額が4800万円を超えると原則、超えた額に税金がかかる。
海外資産も課税対象だが、相続人と被相続人が海外に住所を移してから5年超たち被相続人が亡くなった場合、海外資産には税がかからない。
富裕層の中には、
「シンガポールなどに資産を移し、5年を超えるように海外に住む人がいる」(都内の税理士)という。
財務省は、
・日本国籍を保有する人
や
・10年以上海外に居住していない人
には海外資産にも相続税をかける案などを検討する。
同時に日本で一時的に働く外国人が亡くなった場合に、日本の相続税が全世界の資産にかかる現状も見直す。
海外資産は対象から外し、日本の資産にだけ相続税をかける。
「相続税を理由に日本で働くことを敬遠する高度人材がいる」(在日米国商工会議所)。
日本に永住権を持っていたり、5年以上日本に住んでいたりする外国人には海外資産にも相続税を課すが、それ以外の人は対象から外すなどの案が出ている。
大手企業では外国人を経営陣に迎えるケースが増えており、
経済界からも日本の相続税が海外人材登用の障害になっているとの指摘があることなどが背景にあるようですね。
まだ検討段階ということですが、今後は単純に海外に行ったからといって容易に相続税を回避できるようにはならないものと思われます。
税制は、「課税の公平」という基本理念のもと、常に人間の行動や政策とリンクしています。
こうすれば極端に税負担を減らせる、といったスキームには常にメスが入るものと思って
最新の税制の動向には注意が必要ですね。
個人的には、日本で働く外国人に対する税制の説明責任が、今後は雇用する側(日本の企業)にも求められてくるものと思われますので、この改正は結構重要なのではないかと思います。
(了)