「熟練度」を賃金に反映させる法改正

日経新聞2016年2月7日(日)のトップ記事より。

 

政府は非正規雇用の待遇を改善するため、仕事の習熟度や技能といった「熟練度」を賃金に反映させるよう法改正する。

正社員と同じ仕事なら同じ賃金水準にする「同一労働同一賃金」の実現に向け、経験豊かで生産性の高い派遣社員らの賃金を上がりやすくする。約2000万人に上る非正規の賃金底上げにつなげる。

 

 

5月にまとめる「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込む。関連法はパートタイム労働法や労働契約法の改正と、派遣社員の待遇に関する新法で構成する見込み。厚生労働相の諮問機関の労働政策審議会で詳細を詰め、早ければ秋の臨時国会に提出する。

 

 

さてさて、最近よく聞く正社員と同じ仕事なら同じ賃金水準にする「同一労働同一賃金」について、賃金決定の際「熟練度」を考慮する法改正が行われるとのことです。

 

現状はどうなっているかというと、

 

<現行法>

⇒企業が非正規と正社員との間に賃金格差を設ける場合、派遣労働者は特に定めがなく、パートタイムや有期雇用は「業務の内容」「責任の程度」「配置の変更の範囲」などを考慮するとしている。

 

しかし、いずれも習熟度や技能、勤続年数といった非正規の「熟練度」を賃金に反映するしくみはない。

 

正社員は賃金体系で勤続年数や技術能力の向上が反映されるが、非正規は年功的な要素がなく、賃金格差は年齢とともに広がる。

厚生労働省の調べでは、25~29歳の場合、正社員は1時間あたり1453円で非正規は同1030円。50~54歳になると正社員は同2446円で、非正規は同1029円にとどまる。

 

<法改正後>

法改正では、経営者が賃金を定める際、熟練度の考慮を義務づける規定をそれぞれの法律に設ける。

 

欧州は理由があいまいな賃金の差を禁止し、差を設けた企業に訴訟などで格差の立証責任を課している。日本も「熟練度」を明記することで、なぜ非正規が正規よりも賃金が低いのか企業に事実上の説明責任を課す。

 

ということですね。

 

 

しかし、この法改正が行われても非正規賃金の改善につながるかは非常に疑問ですね。

 

だって、「熟練度」という基準は、会社固有の概念で非常にあいまいなものですし、

 

企業の人件費総額というのは、売上高が変わらなければ、払える額というのは決まっています。

 

例えば、この法改正後に非正規賃金の賃金を上げた場合、他の経費を減らさないと単純に会社の利益は減ってしまいます。

利益を減らさないようにしようと思ったら、売上を増やすしかありません。

単価を上げるのはそんなに簡単ではありません。

業務効率を改善できればいいのですが、これもそう容易ではありません。

 

そうすると、従業員がこなさないといけない仕事量は増えます。

この、こなさないといけない仕事量に「熟練度」という賃金上昇の基準が設定された場合、

結局、非正規で賃金上昇の恩恵を受けれる人がどれくらいいるか。

 

逆に、ぶらさがり社員という、非正規の人と比較してまったく仕事ができない高給取りの正社員の賃金や待遇の見直しなどが進むかもしれません。

 

就業規則や賃金規程なども、この法改正後は見直しが必要でしょうね。

 

5月の「ニッポン一億総活躍プラン」に注目です!

 

(了)

 


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