信託を使うべき理由

信託には他の法制度にはない、2つの特徴があります。「認知症対策」と「二次相続以降の対策」です。

信託による認知症対策

資産・事業を有する被相続人が高齢化に伴い認知症を発症した場合のリスクを回避するために、前もって相続に対して、被相続人の意思を確認し、その財産管理に関して意思に基づいた法的拘束力を持たせる対策です。認知症はいつ発症するかわからない上に、現在の医学では治療もかなり困難であるため、よりリスクヘッジを早めに行う必要性があります。日本の法制度の中で、資産承継や事業承継において認知症対策に有効なのは、唯一「信託」なのです。

認知症にはこんなリスクが
不動産などについては、大規模修繕、建て替え、売却など一切の法律行為が出来なくなるため、不動産経営に大きな障害が出る。
亡くなった後、誰が不動産を受け継ぐかという問題。
よくあるケースでは「生前、父が私に〇〇をくれると言っていたんです!」しかし遺言はなく争族に。
遺言も信託も認知症になってからでは決められない。
土地が希望する価格で買い手がついた時、認知症になっていると売りたくても契約ができない。
相続対策を行いたくても行うことができなくなる!
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信託による二次相続以降の対策

二次相続以降にまで、最初の被相続人の意思を反映させることができる制度は「信託」以外にありません。現在、三組に一組が離婚する時代、家族関係はより複雑化しています。離婚以外にも再婚、晩婚化、事実婚、国際結婚、同性婚など、家族の在り方が多様化していく社会において、相続の問題も複雑化しているのです。配偶者とその子による一次相続での争いは法律に基づいて回避しやすいのですが、その配偶者が亡くなった後の二次相続において紛争が起こりやすくなります。例えば、自分の死後、財産が配偶者に移った場合(一次相続)、その財産のその後の相続先を決めることができるのは、自分でなく配偶者です(二次相続)。家族の在り方が多様化している現在、自分の財産が全く血もつながっていない他人のものになるリスクが顕在化しています。以下にも述べていますが、遺言書は、一次相続の相続先は指定できても、二次相続の相続先までは指定できません。このように後継ぎ遺贈問題に関するリスクを回避することができるのは、日本の法制度の中では「信託」しかないのです。

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信託しかできないこと

「資産承継」「事業承継」など相続においては、「信託」にしかできないことがたくさんあります。それらを「成年後見人」「遺言書」と比較してみます。

信託と成年後見制度との違い

成年後見制度は、成年後見人が財産所有者の判断能力が衰える前の段階において財産の管理ができません。一方、信託では財産所有者の判断能力が衰える前であっても財産の管理が可能です。つまり、信託は、早くから信頼できる人に財産管理を任せることができる安心感があり、予見不能な事態になっても、財産所有者の意思に基づいて資産承継をよりスムーズに行うことができるのです。
また、成年後見人が管理する居住用財産を売買する場合は、裁判所の許可が必要になるなど、柔軟な対応が難しい場合があります(任意後見の場合は、裁判所の許可は不要であるが、合理的な理由が求められる)が、信託の場合は、売買のタイミングを逃すことなく、資産承継をスムーズに進めることができる点も優れた制度と言えます。

  成年後見制度 信託
財産管理 本人の判断能力が衰える前は管理ができない 本人の判断能力が衰える前でも管理が可能
資産承継 遅れる スムーズ
認知症リスクへの対応 ×

信託と遺言書との違い

被相続人の財産承継を行う場合、遺言書は最も知られた制度でしょう。遺言書によれば特定・包括遺贈、相続分の指定、遺産分割方法の指定などを決めることができます(民法964、902、908)。
しかし、遺言書における最大の問題は「遺言が、いつでも書き換えられる」という点にあります。民法においては、遺言はいつでも撤回可能とされており(民法1022)、後の遺言及び生前行為と抵触する遺言は撤回されたものとされる(民法1023)、のです。ここに被相続人の生前の意思が覆され、将来に遺族間紛争の火種を残してしまうリスクがあるのです。

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  遺言 信託
内容の変更(書き換え) いつでも書き換えられる 内容の変更には一定の手続きが必要
資産承継の実行時期 死後 生前、死後
認知症リスクへの対応

滋賀·京都での信託の必要性

今、滋賀・京都の両地域に共通しているのが「不動産価値増大」です。滋賀県は過去50年、毎年右肩上がりで人口が増加しました。草津市を中心とした湖南地域を中心に都市化が進み、地価は着実に上昇してきました。一方、京都市は近年の訪日外国人観光客の急激な流入増によって、宿泊施設への需要が高まり、同市内の商業地ではホテル・簡易宿所の建築ラッシュが発生。この2年ほどで一気に地価が高騰しています。
両地域における「不動産価値増大」の背景は違いますが、資産承継や相続における対策は、滋賀県・京都市に資産を有する方々には必要になっているのです。